小規模事業者持続化補助金の申請の流れ
小規模事業者持続化補助金は、個人事業主や小規模事業者を対象に、販路開拓等の経費を支援してくれる補助金です。2021年度(令和3年度)はコロナ対策として、低感染リスク型ビジネス枠が加わり、最高100万円まで補填してくれます。
近年の採択率は低下傾向にありますが、採択されればご自身のビジネスをスケールアップするチャンスです。今回は、そんな小規模事業者持続化補助金の一般型について詳しく解説します。
小規模事業者持続化補助金の概要
2021年度(令和3年度)の小規模事業者持続化補助金は、補助金額最高50万円の一般型と、最高100万円の低感染リスク型ビジネス枠の2種類で実施されています。
対象者
従業員数20名以下の小規模な事業者が対象で、個人事業主でも構いません。実績を問われないため、創業時に申請することもできます。ただし、申請書類に開業届(個人事業主)が必要になるので、創業予定での申請はできません。また、医師や社会福祉法人等は対象になりません。
業種常時使用する従業員数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 5名以下
宿泊業・娯楽業 20名以下
製造業その他 20名以下
応募枠および補助金額
一般型の対象事業
一般型の対象となる事業は、地道な販路開拓等の取り組み、および販路開拓の取り組みと併せて進める業務効率化(生産性向上)の取り組です。例えば、ECサイトの構築や販促用チラシの作成などが対象になります。あくまで販路開拓が目的のため、単なる企業広報のホームページ制作などでは対象になりません。
一般型の補助金額および補助率
上限50万円で、経費の2/3が補助されます。
通常特定創業支援等 50万円
補助率 2/3100万円
補助率 2/3
なお、「特定創業支援対象」であれば上限額が100万円にアップします。「特定創業支援対象」となるのは、2020年(令和2年)1月1日以降に設立し、かつ過去3年以内に認定市区町村による特定創業支援等事業の支援を受けた事業者です。
特定創業支援等事業の支援とは、創業セミナーへの参加などが該当します。もし思い当たることがあれば一度主催元に問い合わせてみましょう。
低感染リスク型ビジネス枠の対象事業
対象となるのは、感染拡大防止のための対人接触機会の減少と事業継続を両立させるポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービスの導入等です。ネット販売などオンライン化の取り組みの他、自動販売機の導入やテーブル席の個室化、自動セルフチェックイン設備の導入など、対人接触を減らす取り組みが対象になります。
補助金額および補助率
補助金上限額は100万円、補助率も3/4で一般型よりも手厚くなっています。また感染防止対策費として、補助金額の1/4を上乗せして申請することができます。例えば、100万円の補助金を申請すると、別途25万円を感染防止対策費として申請できます。
上限額補助率感染防止対策費 100万円 3/4補助金総額の1/4※
※2021年(令和3年)の緊急事態宣言の影響で月間事業収入が2020年(令和2年)または2019(令和元年)年同月と比較して30%以上減少した場合は、補助金総額の1/2(最大50万円)に上限を引上げ。
対象経費
対象となるのは以下の費目です。
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費(低感染リスク型ビジネス枠はオンラインの展示会のみ)
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金
- 専門家旅費
- 設備処分費
- 委託費
- 外注費
- 旅費(一般型のみ)
- 感染防止対策費(低感染リスク型ビジネス枠のみ)
PCやタブレット、プリンター、家具などの汎用的に使用できるものやトナーなどの消耗品は対象になりません。
小規模事業者持続化補助金申請の流れ
申請手続きは、事業計画を中心とする申請書類の作成をして行います。続いては、申請の流れを紹介していきましょう。
申請手続き
経営計画書等申請書類の作成
各サイトから様式をダウンロードし、事業計画を作成します。一般型はA4サイズ8枚以内、低感染リスク型ビジネス枠はA4サイズ5枚以内でまとめます。
【一般型】
- 商工会議所管轄事業者
- 商工会管轄事業者
【低感染リスク型ビジネス枠】
- 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>
事業支援計画書の作成を依頼
一般型では、事業所管轄の商工会議所または商工会へ経営計画等を持参し、助言および及び申請要件を満たしているかの確認を受け、事業支援計画書に印鑑をもらいます。商工会議所等の会員でなくても構いません。
低感染リスク型ビジネス枠では、事業支援計画書は任意です。とはいえ、書類の確認や助言をしてもらえるので、商工会議所等へ相談することをおすすめします。締め切り前は混み合うこともあるので、早めに相談に行きましょう。
申請書類の提出
補助金申請システムのJグランツにて電子申請します。一般型は郵送でも提出可能ですが、電子申請は審査で加点されるので、できれば電子申請をしましょう。低感染リスク型ビジネス枠は電子申請のみです。
なお、Jグランツを利用するには「GビズIDプライムアカウント」が必要です。アカウントの取得は2週間以上かかります。まだお持ちでなければ、まずはアカウントを取得しましょう。
GビズIDプライムアカウント詳細はこちらを参照してください。
スケジュール
今後の公募スケジュールは以下の通りです。公募締め切りは年に複数回設定されるので、不採択だったとしても次の回で再応募することができます。
一般型
- 2021年(令和3年)10月1日(金)
- 2022年(令和4年)2月4日(金)
低感染リスク型ビジネス枠
- 2021年(令和3年)9月8日(水)
- 2021年(令和3年)11月10日(水)
- 2022年(令和3年)1月12日(水)
- 2022年(令和4年)3月9日(水)
小規模事業者持続化補助金の申請書の書き方のポイント
審査員は短期間に大量の申請書類をチェックするため、書類の書き方が非常に重要になります。書かれている内容がひと目でわかるように写真や図表を入れたり、強調したいところは太字、アンダーラインでメリハリをつけたり読みやすさを心がけましょう。
では、書き方のポイントをお伝えしましょう。
項目別書き方のポイント
申請書は、自社のこれまでの取り組みなどを記載する「経営計画」と、補助金で取り組む事業について記載する「補助事業計画」から構成されます。記載項目別に書き方のポイントを解説します。
経営計画
経営計画では、自社のことをきちんと分析できているかが重要です。できるだけ具体的かつ客観的な記述を心がけましょう。
企業概要(一般型)/自社の事業概要(低感染リスク型ビジネス枠)
自社の事業内容や商品、サービス、業績等を記入します。
審査員は、原則としてWebサイトなどの参照はせず、記載されていることだけで判断します。複雑なビジネスモデルや商品、サービスはできるだけシンプルに、わかりやすく説明しましょう。また、店舗や商品などの写真を載せるようにしてください。
低感染リスク型ビジネス枠では、市場動向や自社の強み、弱み経営方針なども記載します。5枚以内の枚数制限があるので、できるだけコンパクトにまとめるようにしましょう。
顧客ニーズと市場の動向(一般型)
顧客はどのような人たちか、できるだけ具体的に書くようにしましょう。その人たちはどんなニーズを持っているか、お客様の声なども掲載できると理想的です。
また、市場の動向といっても小規模事業者なので、「日本の〇〇業界の市場動向」というよりは、自社の商圏に関わる範囲で書くようにしましょう。
自社や自社の提供する商品・サービスの強み(一般型)
自社の強みを分析できているかどうかが問われます。ヒト、モノ、実績、ノウハウなどの観点から強みを考えて記載します。
強みは、何もすごいものでなくても構いません。お客様がいる以上何らかの強みがあるはずです。お客さまから褒められるところ、自信のあるところなど強みをしっかり記載しましょう。
経営方針・目標と今後のプラン(一般型)
創業の想いや経営方針と売り上げ、利益などの目標を記載しましょう。自社の方向性でもあるので、補助事業計画書の内容と一貫性のあるものにすることが重要です。
新型コロナウイルス感染症の影響・すでに取り組んでいる対策(低感染リスク型ビジネス枠)
できるだけ数値を盛り込み、具体的な状況や対策などを記載するようにしましょう。
補助事業計画書
補助事業計画書に、補助金で実施する事業について記載します。補助金を使っていかに販路拡大や売り上げ・事業の拡大を実現するか、わかりやすいストーリーおよび実現可能性が重要になります。経営計画書との整合性も考慮しながら記載するようにしましょう。
補助事業で行う事業名
単に「Webサイトの構築」などではなく、具体的に内容をイメージしやすい事業名で記載しましょう。ただし、30字以内という字数制限があることには注意してください。
販路開拓等の取り組み内容(一般型)/補助事業の内容(低感染リスク型ビジネス枠)
補助金を使ってどのようなことをやるのか、全体像および具体的な実施内容を記載しましょう。
取り組みによって、
- 自社の課題がどのように解決されるのか
- 目標をどのように達成するか
- 自社の強みがどう発揮されるか
を審査員に理解してもらわなければなりません。「この取り組みなら売り上げが増える」とイメージできることがポイントです。
補助事業効果
補助事業を行うことで、売り上げや利益、集客数、客単価などにどのような影響があるのか、見込みで良いので具体的な数値で記載しましょう。
小規模事業者持続化補助金の採択率
小規模事業者持続化補助金の採択率は、そのときの予算規模や応募数によって大きく変動します。2019年度までは、補助金上限額50万円の一般型のみの実施で、採択率は7割~9割程度と比較的採択されやすい補助金でした。
しかし、2020年度になって補助金上限額を100万円にアップしたコロナ特別対応型の実施が始まったことや、コロナ禍で苦境に陥る事業者が増えたことなどにより、応募者が大幅に増え、採択率も低下しました。2021年度に入ってからも採択率は4割程度と厳しい状況が続いています。もし、自社で作成するのが困難であったり事業が多忙で作成する暇がないという事業様はぜひご相談ください。